「SNS採用って、実際いくらかかるの?」
これは、SNS採用に興味を持った中小企業の経営者や人事担当者が、最初に抱く疑問のほぼすべてです。「無料で始められる」という話も聞くし、「代行会社に頼むと月50万円かかる」という話も聞く。振れ幅が広すぎて、何が正解なのか分からない。
そのモヤモヤの正体はシンプルで、「どこまで自分たちでやるか」によってかかる費用が丸ごと変わるからです。この記事では、内製・広告・外注の3パターンに分けて費用の実態を整理し、中小企業が「自社にとってリアルに現実的な選択肢はどれか」を判断できるように書きました。
数字を並べるだけではなく、「その費用で何が得られて、何が得られないか」まで踏み込んで説明します。
SNS採用の「費用」には2種類ある
SNS採用にかかる費用を考えるとき、まず頭に入れておきたいのは「費用には見えるものと見えないものがある」という点です。
見えやすい費用: 外注費・広告費・ツール利用料など、実際にお金が出ていくコスト。これは請求書や明細で数字として確認できます。
見えにくい費用: 担当者の人件費・工数。SNSを自社で運用する場合、誰かが毎日コンテンツを企画し、撮影し、編集し、投稿し、コメントに返信しています。その時間をすべて時給換算すると、「タダでやっている」ように見えた内製が、実は毎月10〜20万円相当のコストになっていたというケースは珍しくありません。
多くの企業がSNS採用のコスト計算で失敗するのは、「見えにくいコスト」を計算に入れていないからです。外注費と内製コストを同じ土俵で比較するためにも、まずこの2種類を意識しておくことが重要です。
パターン①:内製(自社運用)の場合にかかる費用
現金コストはほぼゼロ。ただし工数コストは必ず発生する
SNSアカウント自体は無料で開設でき、投稿するだけなら基本的に費用は発生しません。ここだけ見ると「タダで始められる」は事実です。ただし、「無料で始められる」と「コストゼロで運用できる」は全く違います。
内製でかかる費用の構成は、以下のとおりです。
人件費(最大のコスト) 担当者の稼働時間が、内製の実質的なコストの大部分を占めます。週に5〜10時間の稼働で、月あたり10〜20万円相当の人件費が発生しているケースが多い(時給換算した場合の目安)。他の業務と兼任で行っていると「タダでやっている感覚」になりやすいですが、その時間は確実に本来業務から削られています。
ツール利用料(必要に応じて) 予約投稿ツール、分析ツール、動画編集ソフトなどは、無料プランでも一定の機能を使えます。本格的に活用するなら月額数千円〜数万円のツールを導入するケースもありますが、最初は無料ツールで十分に回せます。スマートフォンとCapCut(動画編集アプリ・無料)の組み合わせで、実際に採用成果を出している中小企業も多くあります。
撮影機材・備品(初期費用として) 高品質な機材は不要ですが、三脚・外付けマイク・簡易照明などを揃えると5〜15万円程度かかる場合があります。スマートフォンで撮影している企業が実際には多く、これも必須ではありません。
内製にかかるコストのリアルな目安
- 現金支出:0〜3万円/月(ツール料金)
- 人件費換算:10〜20万円/月(担当者の稼働時間相当)
- 合計:実質10〜23万円/月程度
「無料で始められる」は正確で、「無料で継続できる」は不正確です。この認識を持った上でスタートすることが、後で「思ったよりしんどい」と感じないための前提条件になります。
パターン②:SNS広告を使う場合の費用
認知を「買う」という選択。中小企業に向く使い方と向かない使い方がある
SNS広告とは、InstagramやTikTok、X(旧Twitter)などのプラットフォームに有料で広告を出稿し、まだ自社をフォローしていないユーザーにもコンテンツを届ける手法です。自社アカウントの運用とは別に、広告費として予算を組む必要があります。
SNS広告の費用感
- 最低出稿額:日額200〜500円程度から出稿可能
- 中小企業の現実的な月額予算:3〜30万円程度
- 効果を出せる最低ラインの目安:月5〜10万円(ターゲットや地域によって大きく変動)
広告の特徴と注意点
SNS広告は「今すぐ多くの人に見てほしい」という場合には即効性があります。ただし、広告を止めるとリーチがゼロに戻ります。オーガニック投稿(広告なしの通常投稿)で積み上げたフォロワーは資産として残りますが、広告費の効果は予算を切った瞬間に消えます。
中小企業に向いている広告の使い方は「採用説明会の集客告知」や「特定エリアへのターゲティング」など、短期間・ピンポイントでリーチしたい目的の場合です。常時広告を回し続けるのは費用対効果が下がりやすく、中小企業の予算感では継続が難しくなることも少なくありません。
パターン③:外注(運用代行)する場合の費用相場
月額10万円〜50万円が一般的。でも「中小企業向け」と「大手向け」は分けて考えるべき
SNS採用の運用代行サービスには大きな価格帯の差があります。実際に料金を公開している代行会社50社を調査した結果では、月額20〜50万円のレンジに集中しているサービスが最多でした。ただし、この価格帯は大企業〜中堅企業を主な対象としているケースが多く、中小企業がそのまま参考にすると「自社には高すぎる」と感じる可能性があります。
価格帯別にできることを整理する
月額5〜15万円(基本プラン)
- 投稿代行(月4〜8本程度)
- アカウント開設・初期設定
- 基本的なレポート共有
- コメント返信・DM対応は自社負担のケースが多い
- 向いている企業:まず外部の手を借りながら小さく始めたい企業
月額15〜30万円(標準プラン)
- 投稿代行(月8〜16本程度)
- コメント・DMへの返信代行
- 月次レポートと改善提案
- 動画撮影・編集の代行(プランによる)
- 向いている企業:本格的に運用したいが、社内に専任担当者を置けない企業
月額30〜50万円(本格プラン)
- 戦略立案・ペルソナ設計から一貫したサポート
- 複数SNSの統合運用
- 広告運用の代行込み
- 詳細な分析レポートと施策提案
- 向いている企業:採用をSNS中心に組み立てたい、採用規模が大きい企業
月額50万円以上(フルサポートプラン)
- 専属コンサルタント
- インフルエンサー起用・キャンペーン設計
- 複数アカウントの統合管理
- 向いている企業:大企業・採用人数が年間数十名以上の規模
初期費用にも注意
多くの代行会社では、月額料金とは別に初期費用が発生します。アカウント設計・戦略立案・競合調査などの準備作業に対する費用で、数万円〜30万円程度が相場です。契約前に初期費用の有無と内容を確認することが重要です。
フリーランスへの外注という選択肢
運用代行会社よりも安く抑えたい場合、クラウドソーシング(ランサーズ・ランサーズなど)でフリーランスのSNS運用者に依頼する方法もあります。費用の目安は月2〜10万円程度と安価ですが、品質管理や継続性のリスクがある点を理解した上で活用する必要があります。
中小企業が「内製か外注か」を判断するための3つの軸
費用の数字を並べた後で、「結局どちらにすればいいか」という判断をするための軸を3つ整理します。
軸①:担当者の「本業への影響」
採用担当者が他の業務と兼任でSNS運用を担う場合、週10時間以上の稼働は現実的に難しくなります。SNS運用は「コンテンツを企画する→撮影する→編集する→投稿する→コメントに返信する→数字を見て改善する」というサイクルを毎週回す必要があり、片手間でこなせる量には限界があります。
「本業に支障が出ない範囲で継続できるか」を正直に評価することが、内外製の判断の出発点です。
軸②:「ノウハウを貯めたいか」「今すぐ成果が欲しいか」
内製化の最大のメリットは、自社にノウハウが蓄積されることです。担当者がSNS運用を学びながら動かすため、時間はかかりますが、長期的には最もコストパフォーマンスが高くなる可能性があります。
外注の最大のメリットは、専門家の知見をすぐに活用できることです。「3ヶ月以内に採用したい」という急ぎの要件がある場合は、外注で立ち上げを加速する判断が合理的です。
ただし、外注を使い続けるとノウハウが社内に貯まらないという副作用もあります。「最初は外注でノウハウを学びながら、1〜2年で内製に移行する」というロードマップを描いている企業が、費用対効果の観点では最も賢い選択をしているケースが多いです。
軸③:「求める採用規模」と「予算のバランス」
年間採用人数が1〜3名程度の中小企業なら、内製+必要に応じてスポット的な広告出稿で十分に目標を達成できるケースがほとんどです。年間10名以上の採用を目指す場合は、外注を活用して継続的な運用体制を作ることを検討する価値があります。
「SNS採用に月30万円を使って年3名採用できれば、従来の求人媒体(1人あたり50万円)より安い」という計算は成り立ちます。ただし、この計算が成り立つかどうかは、実際に運用してみるまでは分かりません。最初は小さく始めて成果を確認し、予算を追加していく段階的なアプローチが中小企業には現実的です。
費用対効果の正しい測り方
SNS採用の費用対効果を測るために最も実務的な指標は、「採用1人あたりのコスト」です。
例えば、SNS運用に年間120万円(人件費+ツール代・広告費込み)を使い、そこから年間6人を採用できれば、採用単価は20万円。従来の求人媒体で1人あたり35万円かかっていたとすれば、年間90万円の削減になります。
ただしこの計算をするためには、「SNS経由の応募であること」を正確に把握できている必要があります。応募フォームに「この求人をどこで知りましたか?」という設問を入れる、面接時にヒアリングするなど、応募経路を記録する仕組みを最初から設けておくことが前提です。これをやっていないと、SNS採用の効果を正確に評価できず、「やっているけど効果が分からない」という状況が続くことになります。
また、採用単価以外にも見ておきたい指標があります。内定辞退率(SNS経由は低い傾向)、入社後の定着率、面接通過率など、「応募の数」だけでなく「応募の質」を測る指標を設定しておくと、費用対効果の評価がより正確になります。
まとめ:中小企業が最初に選ぶべき現実的な選択肢
費用の整理をシンプルにまとめます。
内製でスタートする場合は、現金コストはほぼゼロですが、担当者の工数(実質月10〜20万円相当)が必ず発生します。外注する場合は月5〜30万円程度の費用がかかりますが、社内リソースを節約できます。広告は即効性がありますが、継続費用がかかり、止めると効果がゼロに戻ります。
中小企業にとっての現実的なスタートラインは、まず内製で3ヶ月ほど試してみることです。そこで「続けられる体制があるか」「成果の兆候があるか」を確認してから、外注や広告の活用を上乗せしていく流れが最もリスクが低くなります。
いきなり高額な外注契約を結んだり、準備なしに広告費を投下したりすることで失敗するケースは少なくありません。SNS採用は「お金をかければすぐ結果が出るもの」ではなく、「継続することで採用ブランドが資産になっていくもの」です。最初は最小限のコストで動かしながら、手触り感を掴んでから投資を増やすのが、中小企業に最も合った進め方です。
予算の制約がある中小企業にとって、SNS採用は「少ないお金で大手と戦える数少ない採用手法」の一つです。費用の構造を正確に理解した上で、自社に合ったペースで始めてみてください。



















相川智洋 – Saitan代表取締役
2023年4月にSaitanに参画し、 2025年1月に同社の代表取締役に就任。累計2000本以上のショート動画制作のディレクションを手掛ける。SaitanのYouTube公式アカウントではTikTok運用のノウハウを発信中。